洞源院寺報なむ

第11号(平成24年5月1日発行)

無一物中無尽蔵

曹洞宗震災精霊供養並びに復興祈願


住職 小野﨑秀通

『法句経』に、「自分の救済者は自分自身である。他の誰が救ってくれようか。自分を正しく制御してはじめて、人は得難い救済者を手に入れるのだ。

愚かな人は、私には息子がいる、私には財産があるなどといって、それで思い悩むが、自分自身がそもそも自分のものではない。ましてやどうして、息子が自分のものであろうか。財産が自分のものであろうか。」とあります。

法句経はお釈迦様の真理の言葉です。お釈迦様は80才で、クシナガラという所で大勢の弟子や信者を前にして、病身を横たえながら、最後の説法をし亡くなります。その時、一人の信者が「お釈迦様がいなくなったら誰を頼りにしたらよいのですか」と尋ねると、お釈迦様は「これまで説き明かしてきた教え、なかでも戒律を私だと思って守り、精進しなさい。そして自らを頼りとし、他を頼りとしてはならない」と諭されました。このことも法句経で説かれています。

己こそ己のよるべ
己をおきて 誰によるべぞ
よく整えし己にこそ
まこと得難きよるべをぞ得ん

「自分の救済者は自分自身である。」とするのは、「よく整えし己」でなければならないとする。貪る欲心を離れ、とらわれる心を捨て、邪心のない清らかな心になった時、「よく整えし己」となることができる。

そのためには戒律をしっかり守って精進しなさいという。私たちは、貪る欲心、とらわれる心を持つゆえに、あれもこれも自分のものと思い込み、苦しみを作っている。本来は自分自身すら自分でないのにとらわれている。

「放てば手に満てり、一多の際(きわ)ならんや」という教えがある。自分のものでないものを自分のものだと思い込み、握りしめて離そうとしない。放してしまえば二度と自分のものでなくなると思い悩む。そこが道理に暗い凡夫の儚い(はかない)知恵である訳です。「放てば手に満てり」と放して見ると、無尽蔵に広がっている世界が見えて来て、自由自在の活動が可能になって来るのです。

この大震災で全てを失って傷心している人も多い。しかし、私たちは遇い難い(あいがたい)いのちを頂いている。そのいのちは、無一物のところから生まれ無一物の世界に帰ってゆくのです。

何ものにもとらわれることのない生き方ができたなら、どんなにかいのちを輝かせて生きることができるだろう。手に満てる人生を歩みたいものです。

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東日本大震災物故者供養及び早期復興祈念護符

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日常の仏教語 娑婆(しゃば)

娑婆とは、サンスクリット語の「サーハ」が語源で、「忍耐」を意味する言葉です。

皆さんは、何気なく生活している中で、自分の心の内から出てくる様々な欲望や周りの人達の我ままなどに耐えている自分がいることに気づきませんか。

この日々暮らしている煩悩や苦悩に満ちている、いわゆる俗世間世界を「忍耐国土=忍土」即ち娑婆というのです。

しかし、この娑婆は、ただ耐え忍ぶだけではないのです。

互いの痛み苦しみを知り、温かい手を差しのべあって、優しくいたわり、共に支え合う、素晴らしい世界でもあります。

苦があるから、仏に逢える。

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東日本大震災犠牲者の合同供養

東日本大震災から、ちょうど1年目の3月11日、洞源院に於いて、震災で犠牲になられた多く方々の遺族や親戚などが参加して、一周忌の大法要と復興祈願法要が行われました。

一周忌は11時、13時の2回に分かれ、14時46分には大震災施餓鬼会として全ての「み魂」の供養が行われました。参列者は1200名に及びました。

この法要に、住職の弟子及び知り合い、副住職の修行仲間が参加、総勢20名の僧侶で行われました。

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巡礼浜供養

早朝より天候に恵まれた4月15日、午前中は「てるてる地蔵石彫会」に参加させて頂き、お地蔵様を無事に完成させることができました。石を彫り始めるとつい夢中になってしまい、楽しいひとときを過ごすことができました。石彫会が目指す千体地蔵に向けて、また一歩前進です。







お寺で昼食を頂き、午後から巡礼浜供養会に参加させて頂きました。30名程で祝田浜から佐須浜、小竹浜、折ノ浜、蛤浜の順に回りました。その日の海は本当に美しく穏やかでした。3月11日の東日本大震災で私達の財産や家族を一瞬の内に流してしまった同じ海とは思えない位に透明でエメラルドグリーンと言っても過言ではない程でした。方丈様が震災で亡くなられた方々の追悼供養と1日も早い浜の復興を祈願した後、岸壁に近寄り海に向かって地蔵菩薩のご真言「オンカーカーカビサンマエイソワカ」と唱えました。そしてお地蔵様が描かれた1000枚のお札を皆で分けて1枚ずつ亡くなった人達の思いを込めて海に流した時は涙ぐんでしまいました。


終わりに方丈様のお話を聞きながら「亡者は苦を離れて安養に生じ、存者は福楽にして寿、窮り無し」の言葉を思い出し、亡くなられた人達の為にも生き残った私達は今日と言う日を大切に生きなければと思いました。山の中から、うぐいすの鳴き声が「ホーホケキョ」とはっきり聞こえ「御苦労様、頑張ってね」と私達を励ましてくれている様です。本当に今日も元気で生きられたことに感謝、感謝です。 合掌

阿部美代子

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立木義浩氏来院

立木「出張」写真館として、写真家の立木義浩氏が2月26日に洞源院を訪れ、木楽舎の雑誌『孫の力』の写真撮影が行われました。この写真撮影に参加したのが、4世代の家族が同居する祝田の阿部文夫さんと孫たち、その他6組の家族です。お寺の本堂や境内などで「孫たちとおじいさん、おばあさん」の撮影会が和やかな雰囲気で行われました。



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地蔵菩薩

村のはずれのお地蔵様は
いつもニコニコ見てござる

お地蔵様は、道の辻に、寺の門前に、最近では事故の現場にと建立され、誰からも慕われる存在です。
「地蔵」は大地の母胎という意味で、『地蔵十王経』には閻魔大王の化身ともされ、妙幢菩薩とも呼ばれている。

お地蔵様は(仏のいない間)お釈迦様が亡くなってから五十六億七千万年後に弥勒仏が登場するまで、衆生を救うという誓いを立てて、お釈迦様の説法に漏れた地獄、餓鬼、畜生、阿修羅、人、天の六道輪廻に苦しむ人々を救う菩薩であるところから、六道能化のお地蔵様として知られている。

お地蔵様には安産、知恵、豊作などの功徳があるとされ、『地蔵菩薩功徳経』にも、お地蔵様を信仰し、布施の功徳を積み、称賛礼拝するならば、「加護を受け衣食豊かに、病軽く、勝縁に恵まれ、苦しみが滅し、先祖の苦しみも離れ、前世の福を受け、慈しみの心が具わり、尊敬されるなどの功徳が得られる」と説かれている。

以前、住職は中国蘇州の寒山寺をお参りした事があって、鐘楼閣に上り、鐘を撞いたことがあった。その鐘の真下にお地蔵様が祀られていた。それを見てハタと気付かされた。お地蔵様が煩悩を打ち出す鐘の声を聞いて、私達の苦しみを代わって受けて下さっている。「代受苦」のお地蔵様が私達の貪り、怒り、愚痴などによって苦しみの元の煩悩をしっかり受け止めて下さっていると知った。

当山の、鐘楼門もそのような想いで、お地蔵様が祀られている。「鐘打てば、受けて下さる煩悩を、なむや能化の地蔵尊」

また、願いに応じてくれるという事から、様々な名の付く地蔵様がある。代掻き地蔵、縄目地蔵、将軍地蔵、とげぬき地蔵など沢山あるが、当山でも「一葉地蔵尊」と名づけ、水子・子育ての地蔵尊としてお祀りし、お参りが絶えない。

柄杓でお地蔵様に水を掛けて願掛けしてお参り下さい。

真言「オン・カアカアカビサンマエ・ソワカ」とお唱えします。

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林英哲 創作太鼓

4月20日洞源院に於いて世界的和太鼓奏者、林英哲創作太鼓演奏があり、終演の後、咲き始めた桜の下でお花見茶会が催されました。

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三十三観音(石仏)

宗像商会 大貫都志男氏
震災で多くの石仏が破損し、中でも三十三体観音の内、八体が破損しましたが、大貫都志男氏が特志寄進をして下さいました。

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洞源院の被害状況

東日本大震災で、お寺も多くの被害がありました。 少しずつではありますが、復興しています。大きな被害は次の通りです。

  • 鐘楼門地盤沈下
  • 庫裡・会館の玄関周辺地盤沈下
  • 本堂・位牌堂、庫裡の屋根破損
  • 内陣須弥壇の床、廊下破損
  • 境内の石灯篭及び石仏倒壊
  • 裏山の地割れ(県に復旧を要請中)

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開創950年記念 伝導掲示板等が完成

皆様のご協力で完成いたしましたので、ご報告いたします。

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活動報告(平成24年1月~4月)

1月18日 大般若祈祷会
2月11日 おねはん会 仏の教えを聞く会
3月5日 東日本大震災物故者供養及び早期復興祈願法要参列 仙台サンプラザホールにて
3月11日 東日本大震災一周忌合同供養
3月17日~22日 彼岸供養(お寺で実施)
3月23日 十一面観音彼岸会永代供養 愛々動物供養
4月15日 石彫会 午前
4月15日 東日本大震災巡礼浜供養 午後
4月20日 世界的和太鼓奏者 林英哲 創作太鼓演奏

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行事予定(平成24年5月~7月)

5月13日 東日本大震災巡礼浜供養(牡鹿半島巡り) 午後1時~
5月19日 護持役員総会 午後2時~
5月20日 仏の教えを聞く会 花まつり 午前10時半~
6月10日 東日本大震災巡礼浜供養(牡鹿半島巡り) 午後1時~
7月8日 東日本大震災巡礼浜供養(牡鹿半島巡り) 午後1時~
※東日本大震災巡礼浜供養への皆さまの参加をお待ちしております。


行事予定の日時は都合により変更の場合もあります。
今後の行事は年間行事のページをご覧下さい。

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お寺からのお知らせ

東日本大震災で仏檀などを無くされた方々に、お寺では仏具店の好意でいろいろと用意しております。必要なものがありましたら、お気軽にお寺の方にご相談ください。

  • くりだし位牌(2種類)格安で提供。
  • 各種位牌(3号~6号)無料
    戒名記入及びご真入れ代実費にてご負担願います。
  • 三尊仏 1,000円


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編集後記

東日本大震災から1年が過ぎました。がれきの撤去が進み、被害にあった住居跡はすっかり更地になってしまいました。これから本当の復興が始まると思いますが、私には停滞しているような感じがします。復興と言う言葉はいっぱいでてきますが、思うように進んでいないのが現実で、改めて被害の大きさを思い知らされます。何とか、明るいニュースを届けたかったのですが、震災関連の記事が多くなってしまいました。

洞源院でも、あわただしかった1年が過ぎ、少しずつ落ち着きを取り戻してきています。広報部も従前のような活動はまだできていませんが、皆で頑張っています。これからも「お檀家の声」や、地域に密着した情報を発信できたらと思っていますので、皆様のご意見やご協力をお願い申し上げます。

後藤和男

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住所をお寺にお知らせ下さい

住所変更届けをされていない方は、早めに現在の住所及び電話番号をお知らせ下さい。

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